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弁護士法人心 所沢法律事務所

遺留分権利者とは?資格要件・遺留分割合・遺留分侵害額請求の流れ

  • 最終更新日:2025年1月7日

生前贈与や遺言書により、不公平な遺産配分が行われるケースがしばしば見られます。

この場合、「遺留分権利者」に該当する方は、実際の相続分と遺留分の差額について、金銭の支払いを請求することが可能です。

今回は、遺留分権利者に該当するための資格要件を中心に、遺留分割合の計算方法や遺留分侵害額請求の手続きと併せて解説します。

1 遺留分権利者とは?

遺留分権利者とは、相続財産に対して「遺留分」という権利を有する者を意味します。

「遺留分」とは、いわば相続できる財産の最低保証額です。

生前贈与や遺言書によって偏った遺産配分が行われても、後述する「遺留分侵害額請求」を通じて、遺留分相当額は最低限確保できるようになっています。

遺留分が認められているのは、相続人の相続に対する期待を、一定程度保護するためです。

生前贈与や遺言書に表れた被相続人の意思を尊重しつつ、相続に対する相続人の期待保護とのバランスを図るため、法定相続分に対して一定割合の遺留分が認められています。

2 遺留分権利者となるのは誰?

遺留分権利者となるのは、被相続人と一定の続柄にある者です。

どのような続柄の者が遺留分権利者に当たるのか、パターンごとに解説します。

⑴ 兄弟姉妹以外の相続人

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分を有します(民法1042条1項)。

「兄弟姉妹以外の相続人」とは、具体的には配偶者・子・直系尊属です。

ただし子がいる場合には、直系尊属は相続人にならないため、遺留分も有しません。

⑵ まだ生まれていない被相続人の子

被相続人が死亡した時点で、配偶者などが被相続人の子を妊娠している場合、未出生の子(胎児)は、相続についてはすでに生まれたものとみなされます(民法886条1項)。

つまり、胎児の状態であっても相続分を有し、それに伴って遺留分も有するということです。

ただし、胎児が死産となった場合には、相続分と遺留分は発生しなかったことになります(同条2項)。

また、被相続人の子を妊娠しているのが配偶者以外の者である場合、相続分および遺留分を得るには「認知」の手続きが必要です。

認知は胎内の子についても認められているため(民法783条1項)、被相続人が死亡する前に、胎児を認知することはできます。

これに対して、胎児を認知せずに被相続人が死亡した場合、認知の効力を発生させるためには、「認知の訴え」を提起しなければなりません(民法787条)。

認知の訴えが提起できるのは、被相続人が死亡してから3年以内に限られます。

なお、相続開始後に認知の効力が生じ、相続権を取得したケースでは、その時点ですでに遺産分割が完了していることも考えられます。

この場合、遺産分割のやり直しを求めることはできず、他の相続人に対して、相続分に相当する価額の支払いを求めることができるにとどまります(民法910条)。

⑶ 被相続人の子の代襲相続人

被相続人の子が、以下のいずれかの事由によって相続権を失った場合、その子である被相続人の孫が代襲相続人となります(民法887条2項)。

  • 死亡
  • 相続欠格(後述)
  • 相続廃除(後述)

この場合、相続権を失った者と同等の遺留分を、代襲相続人が取得することになります。

なお、代襲相続人である孫が、上記の事由によって相続権を失った場合には、さらにその子である被相続人のひ孫以降が代襲相続人となり、以降も同様です(同条3項)。

ただし、被相続人の子が相続放棄(後述)をした場合には、代襲相続は発生しないので注意しましょう。

3 遺留分権利者になれないケース

兄弟姉妹以外の相続人や、その代襲相続人であっても、次に挙げる場合には、遺留分権利者としての資格を失ってしまいます。

⑴ 相続欠格に該当する場合

被相続人等に対して人道に反する行為をした者、または相続の公平性を害する行為をした者は、「相続欠格」によって相続権を失うことがあります。

相続欠格に該当する事由としては、民法891条において、以下の5つが定められています。

  • 1. 故意に被相続人、もしくは先順位または同順位の推定相続人を死亡させ、または死亡に至らしめようとしたために、刑に処せられた者
  • 2. 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者(是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときを除く)
  • 3. 詐欺または強迫によって、被相続人による遺言またはその撤回・取消し・変更を妨げた者
  • 4. 詐欺または強迫によって、被相続人に遺言またはその撤回・取消し・変更をさせた者
  • 5. 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者

上記のいずれかに該当した者は、何らの手続きを要することなく、当然に相続権を失い、同時に遺留分もゼロとなります。

⑵ 相続廃除の審判を受けた場合

被相続人に対して、虐待・重大な侮辱その他の著しい非行をした者については、被相続人の申立てにより、家庭裁判所が「相続廃除」の審判を行うことがあります(民法892条)。

相続廃除の審判が行われた場合、その者は相続権を失い、同時に遺留分もゼロとなります。

ただし相続廃除は、被相続人が取消しを請求できるとされています(民法894条1項)。

もし相続廃除が取り消された場合、対象者の相続権および遺留分は復活します。

⑶ 相続放棄をした場合

「相続放棄」とは、被相続人の遺産を一切相続しない旨の意思表示です。

相続放棄をした者は、初めから相続人にならなかったものとみなされるため(民法939条)、相続権を失います。

それに伴い、相続放棄をした者の遺留分はゼロとなります。

⑷ 遺留分を放棄した場合

遺留分権利者は、遺留分を放棄することが認められています。

遺留分を放棄した者の遺留分はゼロとなるため、それ以降遺留分侵害額請求を行うことはできません。

ただし、相続開始前の段階における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生じます(民法1049条1項)。

なお、遺留分を放棄したとしても、相続放棄をしない限り、相続権自体を失うことにはなりません。

そのため、相続権を保持しつつ、遺留分のみを放棄した者は、遺産分割協議に参加する権利を有します。

4 遺留分割合・遺留分額の計算方法

各遺留分権利者の遺留分割合は、以下の計算式によって求められます(民法1042条1項)。

遺留分割合=法定相続分×以下の割合

  • 直系尊属のみが相続人の場合:3分の1
  • それ以外の場合:2分の1

遺留分額は、以下の計算式によって計算されます(同)。

遺留分額=遺留分の基礎財産額×遺留分割合

遺留分の基礎財産には、現存する相続財産のほか、遺贈や相続開始前10年以内の相続人に対する生前贈与の金額が含まれます(民法1043条1項、1044条1項、3項)。

※相続人以外の者に対する生前贈与の場合、相続開始前1年以内

5 遺留分侵害額請求の概要・手続き

遺留分に満たない財産しか承継できなかった者は、他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」(民法1046条1項)を行うことができます。

遺留分侵害額請求が認められた場合、被相続人の財産を多く承継した者は、遺留分権利者に対して、遺留分に不足する額を金銭で支払う義務を負います。

6 遺留分の請求にお悩みの方は当法人にご相談ください

遺留分権利者の基本的なパターンは「兄弟姉妹以外の相続人」であり、これだけ見るとシンプルに思えます。

しかし、胎児や代襲相続人、さらに相続欠格・相続廃除・相続放棄・遺留分放棄などに関する注意点があり、細かく見ると複雑なルールが設けられています。

さらに、遺留分額の計算には正確を期す必要があるほか、実際の遺留分侵害額請求の手続きは、訴訟にまで発展する可能性があり非常に煩雑です。

そのため、遺留分侵害額請求をご検討中の方は、弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

弁護士にご依頼いただければ、相続財産や生前贈与等の調査を漏れなく行ったうえで、民法の規定に沿って正確に遺留分を計算いたします。

その後の遺留分侵害額請求の手続きについても、弁護士が全面的に代理いたしますのでご安心ください。

遺留分侵害額請求には、相続開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年という期間制限があるため、お早めのご相談が大切です。

遺言書や生前贈与によって不利な取扱いを受けてしまった相続人の方は、当法人の弁護士までお早めにご相談ください。

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